行政データは「公開する」から「AIが正しく使える」へ――デジタル庁のMCP実証をどう読むか
2026. 08. 15
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日本列島を一枚の板に見立て、そこに住む一人ひとりが同じ体重を持っていると仮定したとき、その板を一点で支えてバランスが取れる場所。それが人口重心です。
これは単なる地図上の点ではなく、日本人がどこに住み、どのように移動しているかを映し出す指標と言えます。似た言葉に、人口を東西南北に二等分する「人口中心(中央値中心)」がありますが、人口重心は、遠く離れた場所の人口増減(例えば東京への集中や地方の過疎)の影響をより敏感に反映するという特徴があります。
人口重心は、5年ごとの国勢調査に基づいて計算されます。その算出方法は、時代の変化とともに進化してきました。
かつては「市区町村役場」の位置を基準に計算していましたが、平成の大合併などで行政区画が大きく変わると、人は移動していなくても重心が動いてしまうという課題がありました。そこで現在は、より精密な基本単位区(街区などの最小単位)を基準にする方式に変更されています 。これにより、行政区画の変更に左右されない、真の人口移動のみを捉えた正確な位置が特定できるようになりました。
1920年(大正9年)の第1回国勢調査から現在まで、日本の人口重心は劇的な移動を続けています。
日本全体の人口が減少し始めているにもかかわらず、なぜ重心は東(首都圏方向)へ動き続けるのでしょうか。主な要因は以下の2点とされています。
2020年時点での人口重心は、岐阜県関市に位置しています。
人口重心の移動データは、単なるトリビアではなく、行政やまちづくりにおいて重要な意味を持ちます。
公表されている加茂市の人口重心は以下の通りです。
令和2年(2020年)
【10進数】加茂市(15209):経度139.051108 緯度37.659918
平成27年(2015年)
【60進数】加茂市(15209):経度139度03分05.62秒 緯度37度39分34.61秒
【10進数】加茂市(15209):経度139.051561 緯度37.659613
平成22年(2010年)
【60進数】加茂市(15209):経度139度03分08.42秒 緯度37度39分33.59秒
【10進数】加茂市(15209):経度139.052338 緯度37.659330
※2015年、2010年においては60進数のみの公開なため10進数に変換。
※60進数→10進数変換はWeb版TKY2JGD Ver.1.3.80を使用。
総務省統計局が公開している計算式は以下の通りです。
人口重心の算出方法について
(1) 市区町村の人口重心
(注)上式の計算に用いた基本単位区の経度、緯度は、「政府統計の総合窓口(e-Stat)」(https://www.e-stat.go.jp/) で公開されている「令和2年国勢調査基本単位区別境界データ」を利用しています。
(2) 都道府県の人口重心 都道府県の人口重心は、(1)で求めた市区町村の人口重心の経度、緯度をxi、yiとし、市区町村の 人口をwiとして(1)の計算式で算出しています。
(3) 全国の人口重心 全国の人口重心は、(2)で求めた都道府県の人口重心の経度、緯度をxi、yiとし、都道府県の 人口をwiとして(1)の計算式で算出しています。
※ 参考
(1) 基本単位区とは、街区又は街区に準じた地域を基準とした地域単位(全国で約 200 万)をいいます。
(2) 人口重心及び基本単位区の図形中心点の経度、緯度は、「世界測地系(JGD2000)」を用いています。
(3) 人口重心の移動方向及び移動距離については、「測量計算サイト」(国土地理院)を利用して 算出しています。(https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/main.html)
(4) 都道府県市区町村境界は、「国土数値情報(行政区域及び湖沼データ)」(国土交通省)を加工して 作成しています。(https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/index.html)
これらを取得する必要があります。データは全てe-Statにて取得できました。
データと計算式が揃ったので、早速計算していきましょう。
本記事執筆中にGemini 3.1 pro が公開されましたので、デモ環境の構築サポートをしてもらいました。
おおよそ1時間程度で構築が完了し、非常に優秀なモデルだと感じました。
まずは新潟県加茂市を基本単位区で見てみましょう。
※マップ表示はLeafletを使用。
※マップタイルは国土地理院 地理院タイルを使用。



いい感じに境界データ(shape)と人口データ(csv)をマッピングが出来ていそうです。
続いて本命の人口重心を計算していきます。

弊社計算結果:
【10進数】加茂市(15209):経度139.051234 緯度37.659912
公表値:
【10進数】加茂市(15209):経度139.051108 緯度37.659918
この通り、計算結果に差が生まれています。
そこで二点間の直線距離を国土地理院 測量計算サイトにて算出しました。
誤差計算結果:11.138(m)
約11メートルの差です。この差については国勢調査の結果で用いる用語の解説内で述べられている合算地域および秘匿地域の影響が考えられますが、公表値の算出において合算・秘匿前のデータが用いられているという明確な記述は発見できませんでした。
本記事では、許容可能な誤差として扱うこととします。
基本単位区における人口データは全数・男性総数・女性総数・世帯数のデータが公開されています。
しかしながら少子高齢化が問題視されている昨今においては、世代別の分析も重要となります。
そこで年齢区分別のデータが公開されている統計区分である町丁・字等 統計を用いてさらに分析を進めます。
町丁・字等
「町丁・字等」は,一つの市区町村内で,9桁のコードで記される基本単位区の先頭6桁のコ ードが同じ基本単位区を合わせた地域をいい,平成7年調査の際に導入した地域単位です。 町丁・字等は,おおむね市区町村内の「△△町」,「〇〇2丁目」,「字□□」などの区域に対応 しています。 なお,町丁・字別等では,結果数値が著しく小さい地域については,秘匿処理を行い,近隣の 地区に合算して表章しています。
町丁・字等 統計の利用については、少子高齢化社会における人口移動に関する研究にてその妥当性が述べられています。
よって年代別の解析を町丁・字等 統計を用いて行います。
町丁・字等 別の中心座標:https://www.e-stat.go.jp/gis/statmap-search?page=1&type=2&aggregateUnitForBoundary=A&toukeiCode=00200521


弊社計算結果(町丁・字等):
【10進数】加茂市(15209):経度139.051274 緯度37.659801
公表値(基本単位区):
【10進数】加茂市(15209):経度139.051108 緯度37.659918
誤差計算結果:19.575(m)
こちらも許容可能な誤差と定義し、年齢別の人口重心をマッピングしていきます。

年代別の結果を見ると加茂駅(線路)を挟んで若年層とそれ以外で傾向の違いが出ているようです。

ラベルが見辛いですが、総数15歳未満、総数15~64歳、総数65歳以上の2010年~2020年までの世代別人口重心変化をマップに落とし込んだものです。
重心移動の傾向は各世代同じく加茂市役所方面へ移動しています。移動距離にも大きな差は見られません。
日本の人口重心は、岐阜県の山間部をゆっくりと、しかし確実に東南東へ移動し続けています。その動きは、東京一極集中と地方の人口減少という、日本社会が抱える構造的な課題を静かに物語っています。
地方都市においてはコンパクト化によるインフラコスト最適化や利便性向上、行政サービスへのアクセス効率化という観点において、市町村役場へ人口重心が接近しつつあるということは、一定の文脈においては将来を見据えたまちづくりの進捗と言えるかも知れません。
しかし人口重心は所詮、直線距離と加重平均の指標なため、地理的な障害(山岳や川・湖、線路)を加味できません。
実情に即した総合的な評価が必要となります。
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